歌謡曲95 カバー① まちぶせ

7月12日 火曜日 歌謡曲94

 

おはようございます。

「歌謡曲」通算100回を後押しする企画、第2週目です。週初めの日曜朝から「歌謡曲」は、このブログ始まって以来初めてのことで、なんだか新鮮です。

 

先週は「上手い人多いなぁ」の5回シリーズを完結させましたが、今週は新シリーズ「カバー」からスタートしたいと思います。一時期ほどでは無いまでも、カバーソングは多く見られます。流行もあるのでしょうが、どの時代になっても、名曲後世に伝えたいもの、そんなカバーの数々を、様々な角度でご紹介する企画です。

 

第1回目は、「まちぶせ」という曲の聴き比べです。

荒井由実(現 松任谷由実)さんが作詞作曲を手掛けた作品で、片想いを寄せる男性が別の女性と会っているのを見てしまった女性の心理を歌った曲です。編曲を担当する松任谷正隆さんも言っていますが、歌詞を追うと「ストーカー」チックなんですよね。その歌詞のきわどさを、メロディーリズムで和らげているように感じます。

 

そもそもこの歌詞は、最初にこの曲を歌った三木聖子さんの実体験に基づくそうです。三木聖子さん版が世に出たのは1976(昭和51)年のこと、まずはお聞きください。

時代もあるでしょうが、謡曲ですね。全体ではメリハリも効きながら、柔らかい印象を受けるアレンジです。サビ「胸の奥でずっと」で声が僅かに返るところが好きで、この主人公の女性の必死さが伝わるような気がします。

 

しかし、この曲が脚光を浴びたのは、石川ひとみさんによるカバーでした。1981(昭和56)年に発売されると、この年の紅白歌合戦にも出場しました。過去10作品で売れなかった彼女は、この作品で売れなければ歌手を諦めようと決心して臨んだそうで、過去小ヒットで終わった作品をカバーすることに、当初は反対も強かったと語っています。

石川ひとみさんの場合は、少しアイドルの曲風にアレンジされています。「胸の奥でずっと」「ずっと」で少し声がかすれるところと、「あなたを振り向かせる」健気な様子で訴えかけるように歌う部分が好きでした。

 

1996(平成8)年、この曲の生みの親である松任谷由実さんが セルフカバーを発表します。折しも、彼女は芸能活動のサイクルを変えるべく旧姓荒井由実とした年で、荒井由実時代に提供した「まちぶせ」を発表しました。PVでは、アイドルをイメージした振り付けも決めているのですが、さすがショーヴィズの世界に徹するだけあり、見事に決めています。レゲエ調にアレンジされていることで、曲全体に大人びた雰囲気を感じます。そう言えば、わたしが好きな伊集院光さんが、ユーミンのまちぶせは恐怖を感じる」「斧でも持って構えてそう」ラジオを吐いていましたが、歌詞のとおりの執念を見事に表現できているのかもしれませんね。

 

そして、2007(平成19)年に「VOCALIST3」でカバーしたのは、男性の徳永英明さんです。コチラは完全にアレンジが異なります。曲全体に湿っぽさがあります。ただ、それは悪口では無く、わたしはこのカバー大好きなんです。勝手なイメージを言えば、すっかり陽も落ちた時間の晩秋茶店を想像します。アコースティックギターの落ち着いた音色に始まるのですが、特に2番から加わるピアノが良いんですよね。少しだけ食い気味に入るところに、前のめりになりそうな中で踏み出せずにいるじれったい気持ちが表現されているような気がします。徳永さんが歌う「まちぶせ」の主人公の女性は、この恋が成就しないことを悟っているものの、諦めきれずにいる感じを受けます。

https://www.youtube.com/watch?v=TT7FsZNJ-jE

 

女性3人が歌う「まちぶせ」は、前奏も含めアレンジが違うのですが、この若干の違いによって見事に各々のイメージに合わせていて、このあたりは松任谷正隆さんのの良さも感じます。そして1970年代、1980年代、1990年代、2000年代と、実に4つ年代で発表され、歌われ続けたところは、稀代のヒットメーカー松任谷由実さんの才能が存分に発揮された作品であるとも思うのです。

この4人によるアレンジを聴き比べるだけでも、とても味わい深いと思います。

 

本日は「カバー①」でした。