乗り物162 クルマのはなしvol31~日産自動車が巨額赤字~

6月2日 火曜日 乗り物162

 

こんばんは。

 

5月28日、日産自動車(以下「日産」)は決算会見を行い、2020年3月期(2019年度)の最終損益が6712億円赤字(前期は3191億円の黒字)となったことを報告しました。

これは2000年3月期の6843億円の赤字とほぼ同水準です。当時も日産の経営危機が囁かれ、カルロス・ゴーン氏によるV字回復を経て持ち直したのですが、今後再びV字回復するのでしょうか。日産と言えば、トヨタやホンダと並ぶ、日本を代表する自動車メーカーですが、先行きに暗雲が垂れ込めている気がします。

 

不安要素の1つめは、景気の動向です。

バブル崩壊とされるのが1991(平成3)年、そこから景気が落ち込み、2000(平成12)年頃は日本経済もかなり厳しい状況でしたが、その後(実感を伴わない)景気回復へと向かう手前でした。したがって、状況としては改善余地がありました。

一方で今、景気はやや後退気味だと言われたところに、新型コロナウィルスによる世界的な大打撃が加わり、昨年10月からの消費増税も相俟って、支出が鈍り、今後の見通しも楽観視できない状況です。2000年当時の状況と今とでは、景気の見込が違います。

 

不安要素の2つめは、連合の関係です。

日産は、フランスのルノー社、日本の三菱自動車との連合を形成し、世界的に大きなシェアを持っていますが、カルロス・ゴーン氏の扱いを巡る駆け引きを見ても、一枚岩にあるように見えません。むしろ主導権争いで混沌としているようにも見えます。

さらに、もちろんカルロス・ゴーン氏の私的流用が事実であれば大きな問題ですが、その日産社内でも、経営陣間の確執露呈し、世界で報じられるなど、いったいどこを見て仕事をしているのだろうと思わされるニュースばかりです。

これでは、連合の中での日産の立ち位置は悪くなるでしょう。

 

不安要素の3つめは、コンテンツの少なさです。特に日本市場です。

今の時代ですから、かつてのように4年に1度のフルモデルチェンジも、多彩な作り分けも、費用の観点から無理があることは当然です。車種を整理し、共通車台・共通部品を使用して、コストを削減しながら、将来性ある分野や技術に集中投資するのです。

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コレは日産セダン群のバリエーションですが、左が絶好調だった1990年当時、右が2020年現在の車種です。1990年に13台あったセダンは、現在5台に集約されました。かつての車種2~3台分の顧客を1台で満足させなければなりません。5台ある現在の車種の中で最も直近のフルモデルチェンジはスカイラインで、2014年登場です。6年変わっていません。フーガに至っては2009年発売で11年目、シーマはそのストレッチ版ですから、セダン不振の時代とはいえ、いかに車種展開が乏しいかが分かります。痒い所に手が届くほど、各車種にバリエーションがあり、車種も豊富だったかつてのユーザーを満足させられるはずもないことは、一目瞭然ではないでしょうか。

 

不安要素の4つめは、関連する部品工場疲弊していることです。

2000年当時は、まだ世界的な販売台数の伸びの可能性もあり、コスト削減の余地もあったため、部品工場もコスト削減要請に応じたと言います。端的に言えば、売上=単価×数量ですから、そのいずれかの増加が見込まれるならば、一方を削ることも不可能では無かったのです。しかし、単価に限界が見え、数量の伸びも見込めない中、これ以上の要請に応じることは、部品工場にとって死活問題です。逆に言えば、日産としては、経費削減の過程において、部品工場に要請するという選択肢がほぼ無いわけで、再建策を講じるにあたって厳しい状況にあります。

 

結論的には、従業員のリストラと、販売台数に見合った設備投資、結果として余剰となる工場や生産ラインの閉鎖しかなく、つまりは事業規模の縮小、連合内での立場の弱体化へと繋がる気がします。そうなると、規模の縮小した日本市場への開発・投入の自由度と優先度は下がり、海外投入した新型車を、何年か遅れで日本市場に持ち込むというパターンを繰り返し、持ち込まれた車種も、10年近く据え置かれて魅力が失せます。

この悪循環を断ち切るほどの大ヒットでも生まれれば別ですが、現状の日産車を見て、”コレは欲しい”と思えるクルマが無いので、厳しいでしょうね。勿論、欲しいかどうかは私見ですが、販売不振の現状を見れば、多くの方がそう感じていると思います。

 

日産とは、日本産業の略から生まれた名前です。日本のメーカーなのです。その日産が日本市場を軽視していると言われて久しいですね。本当に寂しい限りです。

かつてわたしが中学生の頃、”将来の日本の自動車メーカーは、トヨタとホンダだけに集約されるらしい”という話を聞きました。当時の日産を見て、”そんなハズ無いだろ”と内心思っていましたが、まさか30年経過して、これほど日産が危ういとは驚きです。

幸い、トヨタは、”金は出すが、口は出さない”スタンスだと言われ、グループのダイハツや日野、資本提携関係にあるスバルやマツダ、スズキといった企業が、それまでの色を極力失わず存続できているので、市場の大きさに比べて国産メーカーが生き残れていますが、日産・三菱の連合はどうなるのでしょうか。

巨額赤字のニュースを聞いて、とても心配になりました。