月曜ア・ラ・カルト8 保険51~地震保険の変化~

3月16日 月曜日 月曜ア・ラ・カルト8

 

こんばんは。

先日は、2011年の東日本大震災発生から丸9年を迎え、その翌々日深夜には、石川県能登半島を中心とする震度5強の地震が発生しました。そうした中、先日、大手損害保険会社の東京海上日動火災保険㈱から、この夏に発売される地震保険の記事を見ました。個人的には面白いと思ったので、ご紹介します。

 

震度連動型地震諸費用保険(地震に備えるEQuick イークイック保険)

https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/200309_01.pdf#search=%27%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E6%B5%B7%E4%B8%8A+%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%BF%9D%E9%99%BA+8%E6%9C%88%27

 

この保険の特徴はいくつかあります。

①インデックス保険であること

②家屋の所有権と連動しないこと

③インターネット専用商品で、加入から請求・受取が完了すること

 

■ インデックス保険

インデックスとは、自然災害等で観測された指標のことで、気象庁の発表した市区町村単位の震度に従って定額の保険金を支払う点が特徴です。具体的には、プレミアム、スタンダード、エコノミーという3タイプの設定金額が予め決められており、震度6弱震度6強震度7という3分類に該当した場合に所定の金額を支払う仕組みです。

震度6弱以上は、最近で言えば、東日本大震災熊本地震大阪府北部地震北海道胆振東部地震で観測されています。その該当確率が高いか否かは別として、従来型の地震保険と比べてメリットが2つあると思います。

・現地の損害調査が不要である

・損壊の有無や程度に関係なく、同じ地域であれば同じ金額を受け取ることができる

一般的な地震保険では、損害発生後に、損害保険会社社員や損害保険鑑定人による現場調査が行われます(津波による流出地域のように、全損地域と認定された場合は別)。自然災害が多い現状、慢性的な調査人員の不足に加え、契約者の側の都合もあるため、調査実施、請求、保険金受取という段階を経るには時間が掛かります。

今回の保険では、該当する地域の震度が支払要件を満たす場合、現地の調査を省略できるため、最短3日で保険金を受領することができるとしています。これにより、保険会社の側は調査員の不足解消や支払時間の短縮というメリットが、契約者の側も早急に当座の緊急資金を確保できるというメリットが生まれます。

また、従来の地震保険では、各家ごとに損害の有無を確認し、その損害の程度に応じた所定の割合を、契約時に設定した保険金額に乗じて決めていました。保険の観点では公平なのですが、同じ地域で被災しながら、隣接する家屋でも、損害程度が異なったり、受け取る金額に差があり、一部では不満の声も上がっていました。

この保険は、市区町村ごとの震度に応じるため、仮に損害が無くても保険金を受け取ることができ、その意味での公平感を満たすことができるでしょう。

 

■ 家屋の所有権と連動しない

実は、先に説明した震度連動型保険の記事が各経済紙面に掲載された前後に、同じく東京海上が8月に発売する予定として、借家でも入れる地震保険を発売するという記事がいくつもありました。それらの記事には商品名が明記されていないものの、支払われる保険金額などが震度連動型保険と同額であり、発売時期が同じことから、おそらくは同一保険を指している記事だと推測します(違っていたら申し訳ありません)

震度連動型保険のどこに着目するかにより、タイトルに差が生じたのだと思います。

いわゆる物保険と言われる場合、その所有権が誰にあるかは非常に重要です。所有権がある人が被保険者となり、その保険の権利を有するからです。

例えば分譲型マンションの場合、各戸ごとに所有権が分譲されるので、その所有者が火災保険・地震保険を準備する必要がありますが、賃貸型マンションでは所有権全体はマンションの所有者に所有権があります。つまり、各入居者は、建物の所有権が無いので、建物についての火災保険や地震保険に加入できません(入居室内の家財については入居者自身の所有物であれば、火災保険・地震保険に加入できます)

新しく発売されるインデックス型保険では、建物の所有権が加入や支給の要件では無いため、賃貸物件に住む人(賃借人)でも加入できる点が特徴です。

 

■ インターネット専用商品であること

既述のとおり、いざ地震が発生しても、保険金受領までにはいくつもの段階があります。被災した方にとっては、保険請求は精神的な負担にもなるでしょう。

その点、加入段階から請求、支払まで、すべてインターネットで完結してしまうので、インターネットを利用する方々にはスムーズだと感じる商品だと思います。

なお、この商品を取り上げた時事通信社の記事内では、仮に保険請求が無い場合でも、支給要件を満たす場合は自動で保険金を支払うと書かれていました。

その真偽は分かりませんが、インデックス型であれば実質的には可能だと思います。

 

さて、ここまでメリットを中心に紹介しましたが、注意点があります。

①20歳以上の個人が加入できる

②最高ランクのプレミアムで震度7の地域に居住しても、保険金は50万円であること

③現地調査を省略することのデメリットも考えられること

個別に見ておきます。

 

■ 20歳以上の個人が加入要件

先程書いたとおり、建物の所有権の有無は問いませんが、加入できるのは20歳以上個人です。現行法では20歳未満は未成年者ですから、この区分はやむを得ません。しかし、今の時期、大学入学で親元を離れて新生活を送るお子さんが、マンションやアパートを借りて新生活を始めるケースは多いと思います。本来、この商品はそうした若年層に適しそうなのですが、残念ながら20歳未満は加入できません。

 

■ 最大でも保険金は50万円

この保険の正式名称を再確認すると、「震度連動型地震諸費用保険」です。

同社のHPでも書かれていますが、あくまで地震保険補完する意味合いで、被災者の緊急的な資金を補うための保険でしかありません。

建物や家財の復旧という(と言っても、従来型の地震保険でも完全復旧には足りないですが)目的で加入する場合には適さないということです。その名のとおり、諸費用保険ですから、一時金として理解し、個人的には従来型地震保険にも加入すべきだと思っています。50万円では、家屋の復旧には到底足りませんからね。

 

■ 現地調査の省略の不安

素朴に思うのは、きちんとした契約者ばかりではないということです。例えば、加入時にはAという地域に居住しており、この保険に加入しましたが、異動でBという地域に引っ越していたとします。転居に伴う届を保険会社に都度遅滞なく行う契約者ならば良いですが、必ずしもそうとは限らないと想像します。

仮にAという地域で震度6弱以上の地震が発生したとします。

既にBという地域に転居していた契約者は、実際には被災していなくても保険金を受け取ることができるはずです。なぜなら、ネット加入で住所を申告し、その地域の震度に応じて(請求しなくても)保険金を受領できてしまうからです。

保険会社の目で見れば不正な受領ですが、一定数こうした事例も生じるでしょう。

反対に、加入者の側も、実際にはBという地域に転居しながら変更届をせずにいたところ、Bという地域で震度6弱以上の震災に遭った場合、届をしていない以上、保険金を受領することができないはずです。

現地調査を要する保険であれば、現場に目的となる建物があり、それが誰の所有で、という確認が入るので、こうした転居のリスクは発生しませんが、この保険では期中の転居が一つのネックになりそうな気がします。おそらくは約款上、当初居住地の適正な告知と、転居の場合の遅滞なき通知を定めていると思いますが、このあたりは一定の不安要素として保険会社も織り込んでいるのでしょうね。

 

 

以上が、商品概要とわたしの所感ですが、詳しくはリンク先を確認してください。

使いようによっては面白いと思いますし、反対に不安要素もあります。必要に応じて加入を検討されてみてはいかがでしょうか。

時代に応じて変化している地震保険の気になる情報でした。