おとなの学習帳31 方言AWA百選①

10月24日 木曜日 おとなの学習帳31

 

こんばんは。

前回に続き、新シリーズ「方言AWA百選」を立ち上げます。標準語と関西弁は、様々な媒体を通じて広く認知されていることと思いますが、その他地域の方言は、知らないものがたくさんあると思います。一方で、標準語や関西弁が地方に浸食し、かつてその地域で通じた方言が忘れ去られつつある危機にあると聞きます。

そこで、わたしの故郷である徳島県=阿波の方言を、ココに残して行こうと思った次第です。阿波(AWA)からタイトルを取りました。

 

今回は、まだ現在でも日常的に耳にする、比較的絶滅危険度の低い方言からです。

 

1 ほなけんど

現役の若者にも広く浸透する、阿波弁の代表格と言えるでしょう。

まず、徳島県の方言の特徴として、「さ行」が「は行」になりやすい傾向があります(「それ取って」→「ほれ取って」、「しつこい」→「ひつこい」など)

「ほなけんど」は「ほ+な+けんど」に分割してみると、なんとなく分かるのですが、「ほ」はおそらく「ほう」に由来し、つまりは標準語の「そう」の意味、「な」は「なる、なり」の短縮で、「けんど」は「けれど」の変形と考えると、「そうであるけれど」、端的には標準語の「だけど」と同義で使われるのです。

例えば買い物に出かけたとき、「これええと思わんで?」「ほなけんど、えらい(=とても)高ぁないで(=値段が高くないですか)?ほれやったら(=それならば)こっちのがええんちゃうん(=良くないですか)?」といった具合に使うのです。

ただ、難しいのは、この「ほなけんど」は、間を埋める際に無意味に発することもあるのです。「いや~ ほなけんどあれやな 今日はええ天気じゃな(=いや~今日は良い天気ですね)」など、「だけど」と置き換えず無視した方が良いケースもあるのです。

県民にとっては、何かと便利な「ほなけんど」はあらゆる会話に登場するのですが、県民が県外で生活するときは苦戦するケースも多いようですね。なぜなら、利便性の高い「ほなけんど」を標準語の「だけど」に置き換えても通じないケースもありますし、やたら「だけど」と言うと、否定的な人だという印象を持たれてしまいます。

 

2 かんまん

これも無意識のうちによく使う言葉の一つです。

なんとなく文脈の持つ雰囲気で理解できると思うのですが、「構わない」の意味です。例えば、他人のお宅にお邪魔する前に電話で「今日3時頃行ってもええん(=良い)?」に対し「うん かんまんじょ(=構いませんよ) 気にせられん(=気にしないでください)」といった具合に使うこともあれば、お邪魔する側が「今日3時頃行ってもかんまんで(=構いませんか)?」と使ったりもします。その他にも「ほこ(=そこ)まで行くんやけど、(車に)乗せてった~か(=乗せて行ってあげましょうか)?」「え~ かんまんのん(=構わないの)?」や、「こんなようけ(=たくさん)小遣いもろたら(=貰ったら)悪いわぁ」「かんまん、かんまん(=いいから、いいから))」など、許容する場面では、やたらと登場する言葉なのです。

 

3 何しよん(で)

これも文字で見れば理解可能と思いますが、「何してるの」の意味です。

発音は「なにしよん」あるいは「なんしよん」で、これも徳島の方言の特徴の一つで、「や行」はきちんと発音するより「しょん」のように発音するため、聞いたときに柔らかい印象になります。関西各地の方言を男性的、女性的で分けるとすれば、徳島の阿波弁は京言葉のような女性的な方言だと言われる理由の一つかもしれません。

また、「しゃ」「しゅ」「しょ」という発音が多いためか、フランス語に聞こえるとか、聞こえないとか。ただ、柔らかな印象の「何しよん」ですが、話し手の言葉の強さで、その意味するところが変わってくるので注意が必要です。

「〇〇さん、何しよん(で)?」「〇〇さん、何してるんですか?」という語り掛け、あるいは問い掛けなので、とても柔らかいのですが、たとえば親が小さい子に「これ!何しよん(で)!!」と言うと、「こら!何やってるの!ダメでしょ!」の意味です。同じ言葉なのですが、その口調の強さで、相手の意図を解釈する必要があります。

 

4 せこい

関西弁を使う芸能人をテレビなどで見掛ける機会が増えました。

その場合の「せこい」は、ケチであるとか、みみっちいといった具合の意味でしょう。しかし、徳島県民の使う「せこい」は、「つらい」「苦しい」という意味合いで、金銭的な要素を含んでいない場合が多くあります。

「体育の授業でようけ(=たくさん)走ったらな 終わった後でせこうなって(=苦しくなって)」「ほんなら(=それなら) 早う(=早く)保健室行ってき(=保健室に行ってきなよ)」などと使うのです。これは海を挟んだ反対側、京阪神地域に行って、使い方を注意しなければいけない阿波弁の一つです。

 

5 いける

標準語に置き換えるならば「大丈夫」が一番近いでしょうか。そのため、日常会話に登場する頻度がかなり高い方言の一つと言えます。

例えば学生が「今日のテスト勉強しとらんのんやけど(=してないのですが)いけるかなぁ・・・(=大丈夫かな)」「あんた(=あなた)頭ええんやけん(=頭良いから) ちょっとぐらい (勉強)せんでも(=しなくても)いけるわよ(=大丈夫だよ)」とテスト前に会話していたり、台所で料理中の夫婦が、賞味期限切れの食材をめぐって「昨日 日にち切れとんやけど(=賞味期限切れてるんだけど) いけるかな(=大丈夫かな)?」「ほら いけるわ(=大丈夫だろ)」と答えるなど、あらゆる「大丈夫」に対して「いける」が登場するのです。

 

今日は、現在でもよく使用される阿波弁を5つご紹介しました。これらを使って、会話の例文を作ってみました。意味分かりますか?

 

道端でうずくまって休んでいるBさんを見掛けたAさん、この二人の会話です。

A「何しよん?どないしたん?」

B「ちょっとせこ~てな」

A「ええ~?いけるで?」

B「あ・・・うん・・・いける、いける」

A「ほんま言よん?無理せられんよ」

B「分かっと~よ。後で病院行ってくるわな」

A「ほんなら ほこのスーパーまで行っきょうけん 病院まで(車)乗せた~わ」

B「いや ほなけんど悪いでぇ。よそ行っきょんやろ?」

A「かんまん かんまん 乗りぃ。方向一緒やけん」

B「ほんまに?悪いでぇ ほれ」

A「かんまんって言よんでぇ。気にせんとき」

B「ほんなら 乗せてってもらおうか。ありがとう」

いかがでしょうか?阿波弁の会話、訳してみてくださいね。

 

以上、ミニシリーズ「方言AWA百選」でした。