MASA日記

働き方、お金のこと、趣味のこと、ニュースなど、徒然なるままに書いています

【特集】揺らぐ信頼①

10月23日 月曜日 【特集】

 

こんばんは。

テーマ間の回数調整の関係から、今夜から3回にわたり【特集】をお送りします。第1回目の今夜は、弁護士法人の業務停止に伴う問題を取り上げます。

 

■ 問題となっている事例

事実と異なる宣伝を繰り返したとして、過払い金返還訴訟を多く手掛ける弁護士法人「アディーレ法律事務所」が東京弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けました。アディーレはウェブサイト上で、過払い金返還請求の着手金を無料または割引にするなどとするキャンペーンを期間限定と謳っていましたが、実際には5年近くサービスを続けていたため、2016年2月、消費者庁より景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして措置命令が出されていました。

 

■ アディーレ法律事務所とは

2005年に弁護士法人化され、現時点において全国に日本最多の86拠点を持つ弁護士法人です。「弁護士がもっと身近な存在となるように活動していきたい」という思いから、ラテン語で「身近な」という意味の「アディーレ」と名付けました。実際、債務整理、交通事故、離婚問題、刑事弁護、労働問題、B型肝炎の給付金請求など、個人の相談案件を中心に取り扱っています。

 

■ 懲戒処分の内容

事務所が依頼者と結んでいた契約はいったん解除しなければならず、訴訟や新規事件の受任、顧客対応など一切の活動ができなくなりますウェブサイトも閉鎖され、現在は「弁護士会からの業務停止処分についてのお詫びと契約解除の状況に関してのご案内」と題する文書、ならびに寄せられている質問へのQ&Aのみが閲覧可能です。

この処分を受けて開設された東京弁護士会の相談窓口には、17日までに3309件の相談が寄せられているそうで、混乱はかなり広がっているそうです。

 

■ 問題の背景

わたしは専門家ではありませんし、当事者として依頼している人間でもありません。あくまで一個人としてこの問題に関心を持っているだけです。

①やり過ぎ感はあった

弁護士事務所と言えば、個人事業主の集団であり、2002年4月1日施行の改正までは法人化も認められていませんでした。弁護士利用の利便性向上と、弁護士の経営安定化の側面から認められた改正でしたが、所属弁護士のテレビ出演に加え、「債務超過」「B型肝炎給付金請求」などはやや煽りを感じるような広告もあり、個人的には”やり過ぎ”な印象を受けていました。人気芸人を起用したCMなどもその一つでしょう。

②問題は根深い?

86拠点という拠点数は、弁護士という業界に照らせば相当多いと思っています。弁護士事務所に気軽に訪れる人はまだ多いと言えず、むしろ弁護士と聞けば敷居が高いと感じる人の方が多いでしょう。つまり、日本は訴訟社会ではなく、できれば穏便に当事者間で済ませたいという国民性が根強いことの表れとも言えます。

一方で、国が訴訟社会への変貌を見越して2004年より導入した法科大学院制度により、法曹人口は大幅に増えました。つまり、需要と供給のバランスを欠いた状態に陥ったわけです。国の見誤りのツケは、このブログでも何度か書いた法科大学院の閉鎖や、若手弁護士の低収入化などとして顕在化してきています。限られた相談件数に対して弁護士の数が多すぎることが、この問題の根っこではないか、とわたしは思っています。

③行為と処分のバランス

こうして需要に対し過剰供給となった弁護士の世界では、顧客争奪が必然的に起こります。国の施策の時流に乗ったアディーレは、「債務超過」「B型肝炎給付金請求」といった、個人にも食いつきやすい宣伝を大々的に行うことで、その勢力を全国に拡大していきました。おそらく関心が無い方でも一度は耳にした名前でしょう。

一方で、仕事を奪われる形の弁護士事務所は、こうしたアディーレの態度を快く思わないのも心情的に理解できます。弁護士は倫理観が高い職業ですから、”経営安定化”に軸足を置いているように見えるアディーレの態度を疑問視するわけです。

今回出された東京弁護士会の処分について、当のアディーレは責任は受け止めるが均衡性を欠く処分として不服申し立てを行う意向です。処分の重さについては、「たしかに重すぎる」という声も、一部弁護士から漏れているのも事実です。この処分は、もしかすると、経営に軸足を置いたアディーレに対し、やっかみを持った弁護士が弁護士倫理や顧客の信頼を理由に、重い処分を科したのではないか、という見方です。

その真相は分かりませんが、過去の国の施策誤りが、法曹界に歪を生み、結果的にこうした問題を引き起こしているとすれば、残念なことです。

 

■ 依頼者を大切に

何度も言いますが、真相は分かりません。しかし、仮にそうした弁護士間の見えない争いが背後にあったとすれば、いわゆる”内輪もめ”の話です。

相談を行った依頼者が、契約解除の後に他の事務所と契約し直さなければならない等、依頼者が置き去りにされることが無いよう、弁護士会には対応して欲しいものです。

 

■ むすび

わたしは法学部卒ですし、仕事柄、弁護士とのお付き合いもあります。

彼らは皆ジェントルで、倫理観も高く、法曹という世界がいかにあるべきかを真剣に考えています。困ったときに頼れる味方であるはずの弁護士が、”利益”を軸に対立するようなことはあって欲しく無いですし、やはり正義の味方であって欲しいと願います。

法科大学院は半数が閉鎖され、今後は需要と供給のバランスも是正されていくかもしれませんが、何よりも「信頼」される人としての法曹人育成に期待したいです。