MASA日記

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乗り物 第35回~TJライナー vs S-TRAIN~

8月22日 火曜日 乗り物第35回

 

こんばんは。

今夜の火曜日テーマ「乗り物」は、都内屈指のターミナル池袋駅を起点とする東武鉄道西武鉄道が誇る着座制の通勤ライナーについてです。

 

◆「S-TRAIN」と「TJライナー」の現状

西武鉄道は、今春3月25日のダイヤ改正に合わせて、新たに通勤ライナーS-TRAINを設定し、これに合わせて新型となる40000系電車も投入しました。

※「S-TRAIN」の詳細は、本ブログ2017年2月28日付「乗り物第15回~S-TRAIN~」にも記述しています

来月で半年を迎えるS-TRAINの乗車率ですが、芳しいとは言えない状況にあるようです。西武鉄道からの正式な乗車率資料が見当たらず、あくまで実際に乗車したわたしの知人や、他のブログの体験記を見た限りでは、便によっては20%程度しか埋まっていないという声も散見され、スタート半年は苦戦中のようです。

一方、西武鉄道にとってライバルである東武鉄道が誇るTJライナーは、2008年6月14日の運行開始以降、平日夕方下り便は概ね90%台の乗車率を誇っているそうです。2016年3月26日ダイヤ改正により朝2本、夕方3本が追加されましたが、2016年度の第2四半期の乗車人員は対前比40%増加と、この増便もまた成功しています(2016年度第2四半期決算説明会」より)。

着座制の通勤ライナーである点、ロングシートクロスシートを転換できる通勤型車両を使用している点では、双方の違いはありません。では、なぜこのように結果に差が生じているのか、わたしなりに理由を考えてみました。 

 

 

◆ターゲットの違い

 東武鉄道は池袋から30分以上の利用客に照準

東武東上線の場合、準急は都内を通過した以降は全駅停車するため、川越駅以北からの利用客にとっては、実質的には急行以上の種別を選択するのが一般的でしょう。

この急行で見た場合、池袋駅を出ておよそ30分という区切りでふじみ野駅に到着します。TJライナー下り便の場合、ふじみ野駅以北からの乗車は着座整理券無しで利用できることからも、速達列車で30分以上掛かる場所に住む利用客を、より早く運ぶことがTJライナーの存在意義と言えるでしょう。同様に、池袋駅から急行で60分を要する東松山駅以北は、TJライナーの全列車が停車します。

このように、池袋駅から見て遠方の利用客に対し、最も速達性の高い選択肢を提供しているのがTJライナーというわけです。

西武鉄道は地下鉄利用客に照準

S-TRAINの場合、平日と休日ではその役目がはっきり異なります。今回は通勤ライナーとしての比較をしているため、平日ダイヤに絞って記述します。

S-TRAINの大きな特徴は、地下鉄線に直通することでしょう。登場時、盛んに話題に上ったのは、都内屈指のターミナルである池袋駅を通過駅としたことでした。東武鉄道池袋駅を起点に遠方の利用客をターゲットとしたのに対し、西武鉄道は敢えて池袋駅からの利用客を狙わなかったのです。

平日ダイヤの停車駅は、西武線内は所沢、保谷石神井公園の3駅。メトロ有楽町線内は飯田橋、有楽町、豊洲の3駅です。個人的には、S-TRAINのターゲットは、西武線各駅から有楽町駅(東京駅周辺)以南への通勤通学客なのだろうと思っています。埼玉県民の知人に聞くと、山手線で見た場合に、有楽町駅は池袋駅のほぼ正反対に位置するため、意識の中で遠く感じるのだそうです。

こうした”埼玉都民”に有楽町駅や豊洲駅への速達性列車を提供したものと思います。

 

◆「S-TRAIN」が奮わない理由の考察

①メトロ有楽町線に乗り入れる呪縛

東京メトロ有楽町線を利用したことがある方は容易に理解されるでしょう。

有楽町線には、速達列車を走らせるための待避設備がありません。つまり、前を走行する各駅停車との運転間隔を空けるか、各駅停車を間引くしか無いのですが、待避に使えるとすれば小竹向原駅、間引くとすれば池袋駅しかないのです。

そんな有楽町線に直通する速達列車を朝夕の通勤時間帯に走らせればどうなるでしょうか?平日の有楽町線池袋駅から新木場方面は、午前7時台で20本、午前8時台で22本設定されています。到底、速達列車を通すために他を犠牲にする余裕はありません

②存在意義を見失っている

①で書いたとおり、有楽町線に乗り入れるが故に生じる不自由さは、ダイヤに如実に表れています。S-TRAINの上りは、所沢6:24発の102号の次は、なんと所沢発15:18発の104号までありません。同様に下りは、豊洲17:00発101号から3時間おきの3本です。

さて、「S-TRAIN」のターゲットと思しき利用客について、先程わたしは、有楽町以南に向かう埼玉都民ではないか、という仮説を立てました。通勤通学の満員電車を回避したいであろう人々は、現状のS-TRAINの走る時間帯の利用客では無さそうです。強いて言えば、下り20:00発が最もターゲットとする利用客の望む時間帯に近く、飲み会などで遅くなる週末の23:00発あたりがこれに次ぐのかな、と思いますが、その他は残念ながらターゲットと思しき利用客が望む時間帯とは言えないでしょう。つまり、通勤ライナーであるはずのS-TRAINが、有楽町線に乗り入れたことで、通勤通学客を取り込めず、存在意義を果たせないジレンマに陥っている気がするのです。

東武東上線TJライナーが、特に下り便で池袋18:00発以降24:00まで30分おきに設定されているのとは大きく異なっています。

③時間に比して高い

一番遠い所沢駅豊洲駅は、「S-TRAIN」を利用しない場合、乗換1回を含めおよそ60分です。その中間駅利用者にとっては、所要時間はさらに短くなります。

東武東上線TJライナーが着座整理券310円なのに対し、西武鉄道S-TRAINは510円と200円も高い料金設定となっています。単純比較は良くないと思いますが、この510円という金額は、ランチ代も節約しているサラリーマン諸氏にとって毎日乗れるような代物では無く、余程残業で疲れたときや、飲んで着席して帰路に就きたいとき以外は”控えよう”という意識が働いてしまうのではないでしょうか。

ただでさえ埼玉から飯田橋・有楽町・豊洲というニッチな利用客を狙ったところに、510円という高価格な着座整理券のダブルパンチが、苦戦の理由かと思います。

 

◆「S-TRAIN」の今後

首都圏私鉄各社のトレンドである着座制の通勤ライナーとして、西武鉄道が満を持して投入したS-TRAINを早々に辞めるわけにはいかないでしょう。

かと言って、有楽町線の朝夕に他の電車を間引くことは実質的に不可能です。本来なら「マニアな小ネタの世界」にでも書くべきわたしの妄想が走り出すのですが、生き残りを賭けた改善策をいくつか書いてみます。

有楽町線を捨てる(ターゲット変更1)

何度も述べたとおり、有楽町線を走る限り、増便できる時間帯は限られてしまいます。一方で池袋駅を起点とするのであれば、既に速達列車はあるため、S-TRAINの存在価値は見出せません。そこで、有楽町線から副都心線に寝返ってはどうでしょう?つまり、新宿・渋谷・横浜に向かう通勤通学客をターゲットにするわけです。

副都心線には、朝夕の時間帯にも速達列車が走っています。池袋駅~渋谷駅という短い距離の間にも待避設備がありますから、各駅停車との接続や待ち合わせも可能です。

その場合、保谷石神井公園では、東京方面各駅との距離が近すぎてメリットが感じづらいです。始発駅を飯能駅とし、停車駅を入間市駅<乗車のみ>、所沢駅<乗車のみ>、小竹向原駅有楽町線ユーザー、東武鉄道方面ユーザーへの利便性向上)、新宿駅、渋谷駅・・・とすれば、本来の「S-TRAIN」の存在意義に近づきます。

八高線の本数の少なさに悩む通勤通学客にも、新たな選択肢になり得るでしょう。

②通勤通学客を捨てる(ターゲット変更2)

有楽町線方面への時間短縮を売り込みたいなら、通勤通学客を捨てる選択肢もあります。通勤通学客をターゲットにするからこそ、有楽町線の不便さがモロに悪影響を及ぼしているのですから、ターゲット変更してしまえば楽になります。

S-TRAINは(有楽町線内で比較的自由にダイヤ設定できる)日中時間帯ありき、と考えれば、ターゲットは懐に余裕のある主婦層になるでしょう。

ある調査では、家庭内で割かれるお金の割合で、サラリーマンの小遣いはペット以下という結果が出ていましたから、その権限を握る主婦層にアプローチすれば、510円も決して割高とは映らない可能性もあります

停車駅も、飯田橋を廃止して、有楽町駅・銀座一丁目駅豊洲駅とすることでロングランの速達列車の性格をはっきり打ち出すと同時に、高級ブランド店や豊洲新市場に気軽に行けるマダム向け速達列車として生まれ変われば良いのです。

現地で利用できる食事券やクーポンと往復乗車券をセットにして、即時申込可能なパッケージ商品化してしまう手もあります。

③東京目線で考える(ターゲット変更3)

東京への通勤通学に利用する”埼玉都民”を狙うと、朝夕のラッシュにぶつかり、有楽町線の呪縛に苦しむことは再三書いてきたとおりです。

それならば、東京から埼玉に向かう人をターゲットにすれば、朝夕にダイヤ設定してもラッシュにぶつからないのではないでしょうか?

西武鉄道には、”ちちんぶいぶい”でお馴染みの人気スポット西武秩父や、都心から近い自然豊かな長瀞など、日帰りで楽しめる観光資源がいくつかあります。

平日にその方面に出向く東京都民は少ないかもしれませんが、観光のために上京してきた人や、訪日客にとっては、気軽に行ける日帰り観光スポットになり、その往復の足としてS-TRAINは十分に存在意義を発揮できるでしょう。

そうした人たちには、仮に往復1000円だとしても、予算のほんの一部として容易に支払ってくれるのではないでしょうか。

 

と、書いてみて気づくのは、現状の存在意義を維持しようとすれば、今後もS-TRAINは苦戦を強いられそうな気がすることです。通勤ライナーという性格を踏まえ、とてもシンプルに考えた東武鉄道は正解だったと思います。

とは言え、まだS-TRAIN開始から半年も経っていません。今後、どのような巻き返しが見られるのか、楽しみに見守りたいと思います。